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2024年5月1日「前回2022年のときの円買い介入の状況を振り返る」

 日銀が30日に公表した5月1日の当座預金残高の見通しによると、為替介入を反映する「財政等要因」による減少額が7兆5600億円だった。為替介入を想定しない市場推計と5兆円強のずれが生じており、市場では円が急変動した29日に5兆円規模の円買い介入があったとの観測が強まっている(1日付日本経済新聞)。

 介入を実施したかどうかは、5月31日に公表する4月26日〜5月29日分の合計介入額で正式に明らかになる。

 過去最大規模の介入は2022年10月21日に実施したもので、この際には5.6兆円の円買い介入が実施された。今回も同規模に匹敵する規模の介入であったとみられる。

 当時の状況を確認してみたい。

 2022年9月22日に政府・日銀は1998年6月17日以来となるドル売り円買い介入を実施した。この際には2.8兆円の外貨準備を取り崩して介入を行ったとされる。

 当日のドル円は145円台から140円台までドル円は下落したが。140円台でブレーキが掛かった。

 その後は介入警戒も残り、恐る恐るドル円は上昇してきた。介入効果は皆無ではなかったものの、結局、ドル円は介入時の水準を上回ってきた。

 10月21日のニューヨーク時間の朝方にドル円は一時151円94銭まで上昇し、32年ぶり安値を更新した。米10年債利回りが4.33%とほぼ15年ぶりの高水準をつけるなど、米国債利回りの上昇を背景とした円安となっていた。

 このタイミングで、大口の円買いドル売りが入った模様で、日本時間の21日の夜、ドル円は一時144円台まで下落した。

 日銀が公表した当座預金残高の見通しからの推計によると、この際の円買いドル売りの為替介入が5.5兆円規模に達した可能性がある。この規模は円買い介入としては過去最大となる。

 日経新聞は22日付の電子版で関係筋の話として、政府・日銀が円買い・ドル売りの為替介入に踏み切ったと報じたが、日本の財務省はコメントを避けた。つまりこのときも覆面介入となっていた。

 24日の東京時間の朝方に再び、大口の円買いドル売りが入った。ドル円は145円台に低下。こちらも覆面介入が実施された。

 米国のイエレン財務長官は24日、「日本が行った、または行ったと示唆した為替介入について私は知らない」と述べていた。


2024年5月1日「ドル円が160円を抜けたタイミングでの介入か」

 昭和の日の休日で東京市場が休場だった29日に、ドル円は一時160円24銭と1990年以来の高値を付けた。長期チャートをみるとここを抜けると260円あたりまで節目らしい節目がなくなる。

 ユーロ円は171円60銭と2008年につけた最高値の169円77銭を抜いて、過去最高値を更新した。こちらは上値の節目がなくなった。

 市場ではドル円の160円、ユーロ円の170円を試しにきた格好となり、日本の当局の動きを探ろうとしたような動きとなった。

 市場介入を行うかどうかは財務省が決定し、日銀が売買を行う。介入の有無は財務大臣の了承を得た上で、財務官がタイミングを判断して指示し、実行部隊が日銀となる。

 ドル円とユーロ円が節目を抜けたあと、29日の13時あたりでドル円・ユーロ円ともに急落となった。動きからみて介入の可能性が高い。

 神田財務官は介入の有無については「ノーコメント」としており、覆面介入といった格好になった。

 ドル円は一時155円台に急落(ドル安円高)、その後157円台に戻ったあたりで、16時頃に再度まとまったドル売りが入り、ドル円は16時半ごろに154円50銭近辺まで下落したのである。

 ユーロ円も同様に29日の10時半あたりに171円60銭の高値を付け、13時と16時に急落し、165円60銭と6円もの急落となっていた。

 動きからみて介入であった可能性は高い。チャートも当然意識されていたと思われる。しかし、円安の根本的な原因が解消されない限りは、介入だけで円安にブレーキを掛けることには無理がある。

 米国の景気の底堅さや物価の粘着性によって、FRBの利下げ観測が後退し、それが米長期金利を上昇させている。

 それに対し日銀は再び柔軟性を失ったかのような状態に戻ってしまった。

 日銀は利上げにはまだ時間が掛かっても、国債の買い入れを4月からの国債減額分ぐらいは減少させても、国債需給にはさほど影響は出ないであろう。

 国債買入の減額の可能性を市場に示すことで、過度な円売りにブレーキも掛けられたはず。どうしてそれをしなかったのか。いやできなかったのであろうか。


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